風が舞う。
風がそれを運びこむ。
「限!」
不意に後ろからの叫びに近い声。
「限、びっくりした。ずっと遠くしか見てないんだもん。そこ、もう柵だよ」
氷響に言われて気がついた。柵の近くまで来ていた私…。
「もうすぐ集合時間だよ、いこ」
びっくりした。
限はここのところ学校には来るし、行事にもたまには参加する。今日の野外授業もそう。
でも個別活動になってふらといなくなった限に気づいてなんとなく不安になって探した。
そうしたら崖からすぐの柵前で足元など見ていない限の姿。思わず声をかけた。
「…そうね。いくわ」
私はどうしてこんな場所へ来たのだろう。何かに誘われるように、そう風を感じて…。
何か感じるものがあったのかもしれない。
それでも氷響に声をかけられて感じられなくなってしまった。
「ここ、風が気持ちいいね」
一緒に歩きながら氷響が笑う。
一緒に歩きながら私が気持ちいいといったら限が少しだけ笑みを浮かべながら答えたようにみえた。
「…そうね」
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