「何かを手に入れるための犠牲ってどう思われます?」
彼女は悲しそうな瞳で僕に問いかけた。僕は知らない。けれど、彼女に答えたくて必死に答えた。
「ものによると思うけど、しょうがないこともあると、思う」
それが僕の最後の言葉。彼女と話した最初で最後の言葉。
「公園で?」
それはたわいも無いただの噂話だった。
「そっここんとこ何件もらしいよ。首に二つの穴。ほとんど血液の残っていない死体」
「楽しそうだと思わね?」
ただの噂話がいつの間にかボクタチを公園に導いた。3人で面白半分に、けれど空から人影が降ってきた時はもう三人ではなかった。
たぶん二人はてんでばらばらに逃げていった。僕も逃げればよかったのかもしれない。もっとも順番が変わっただけで逃げても無駄だったのかもしれないが。
とりあえず、僕は逃げなかった。逃げられなかった。それは彼女が綺麗だったから。空から降る時にみたその顔に見とれた。見とれて僕は逃げられなかった。
「こんばんは」
鈴の鳴るような声で僕に挨拶した彼女に、僕自身麻痺していた。そしてそのどこか切ない瞳に惹かれた。
僕はどうなるのだろうか。やはり明日の朝、死体となった僕は皆にさらされるのだろうか?あとの二人は?二人も死ぬのだろうか?それとも逃げ切れるのだろうか?
もうどうでもいいのかもしれない。ただ鼻先に彼女の匂いを感じながらただ呆然としていた。
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