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ある方の影響で始めた八神の自由気ままな箱庭
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八神
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女性
自己紹介:
創作、空想、妄想、その他諸々が好きな八神。
ゆっくりのんびりマイペースなB型。
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鳥がなく。
まだ夜明けだというのにちちちという鳥の声で目が覚めた。

横にいたはずの彼女は、いなかった。

そのいない空間に優しく手を触れようとするが手は虚しく空をかするのみ。
しょうがなく敷布の上までその手を降ろす。
温もりは、全くなかった。

彼女がここを離れてから相当な時間がたっていることを物語っている。

ドアの向こうから、微かに物音がした。

どうやら彼女は居間の方にいるらしい。
「何、やってるんだい?」

不意にかけた声に驚く彼女。

「びっくりしたわ。急に思いついたの、今度の題材」

彼女は嬉しそうに笑った。

「どんな話?」

「あのね、」

彼女が目を煌めかせながら話し出す。

そして夜は明けていく。

彼女の笑顔と楽しそうな声で。
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七夕の夜には祭りがある。
近くの神社の大規模でもないけど近くの人間なら誰もが知っている通称七夕祭り。
ほんとはもっとちゃんとした名前があるらしいが近所の人もましてや氏子さんでさえその名前を使わない。
七夕祭りには沢山の的屋が軒を列ねて参道を祭りの道にしたてあげる。
小さい頃から神社が遊び場だったボクは当然的屋がいても遊び場だった。
「こらボウズ、組み立て中は危ないだろ。向こういってろ」
口は汚いけど絶対に暴力で退かそうとはしない。そんな的屋の人達だったからついついなついてしまった。
的屋の人たちは年に一回のこの七夕祭りに店を出す。七夕祭り以外の日は別の祭りの場所にいって店を出す。
毎年毎年的屋の人達に少しずつ教わった。
的屋をよく思っていない人達のことも。

ボクが小学校にあがった頃、友達が出来た。なつきという的屋の若い夫婦の子供。
「なちゅきちゃん」
ボクはなぜかどうしてもつがうまく発声できなくてもちゅになってしまった。
「くすくす。たっくんなつきのこと呼べないの」
彼女はボクが無理矢理呼ぼうとするとそう笑った。だけどそれだと不公平だからボクも負けずとがんばる。
「じゃあなっちゃんはボクの名前いってみなよ」
「ふん。たちひとでしょ」
「違うよ、ボクたきひとだもん」
「おあいこだよーだ。それにたっくんはたっくんだもん」
「じゃあボクもなっちゃんでいいもん」
時にはけんかしてでも仲良かった。けんかしても一年会えなくなるから仲直りする。

けれど小学六年の時、些細なことでけんかした。お互い子供程素直になれなくて大人程わかってなくて初めてけんか別れした。

でも仲直りすればよかった。
次の年から的屋は数が変わってしまった。場所代のなんかと神社のなんかだとかだったけど小学校卒業程度のボクにはわからなかった。
あの小6の七夕からなつきには会っていない。

だから高校に入ると的屋廻りを決行した。

いつか織姫と彦星のように出会えることを信じて。

七夕の夜、星を見ながらおもう。
この空をなつきも見ているだろうか、と。
チリンチリン。
今日もドアにかかった鈴が軽やかな音をたてる。
「いらっしゃいませ」
出てくるのは女主人ともう一人。時には青年が時には幼子が時には少年が。

彼等に迎えられた人間はある共通が。


あなたの前にもその店は現れるかもしれません。


澄んだ水辺に独りの少女。
山と山に挟まれた谷間にあるここはめったに人などくるはずがない。
好き好んで来るとしても人を訪ねて。
それがそんなここよりも少し離れた水辺。
なんとなく怖いと思った。
「誰!あんた誰よ!そこで何してんの!」
人でないものでもみたように怖かった。自分よりも少し年下の少女に声をあらだてて警戒する。
「ひと…」
目がどこも向いていないようで少女は微かな反応を示す。
「人…風よ!」
少女が視点を私に定めた瞬間、少女が声を発し終わった瞬間急に突風が吹き荒れる。
回りの木の葉が砂塵が舞う。
思わず顔を被い、目をつむって交す。
風が弱くなり目をあけたとき少女はいなかった。
まるで狐に抓まれたような感覚。

なんとなく思った。
少女は風の精なんだなと。
さっき初めての時は怖いと思ったのになんか妙に納得してしまった。
新しい空気、新しい家、新しい街、全てが新しい初めてのセカイ。

全てが新しく、けれどどこか懐かしい…。

昨日夜遅くに御影の街に着いた。
朝、昨日はわからなかったセカイが広がる。

東京で育った私にとって空気が違う。鼻をほどよく潤す。あの東京特有の埃っぽさが忘れられるほど気持ちが良い。
「おはよう、猫さん」
庭からみえた道路を悠然と歩く猫に挨拶をしてみた。
猫はちらとこちらを窺うとまるで挨拶を返すように小さく「にゃん」と鳴いてまた悠然と歩いていった。
その猫を見送るように小さい庭をぬけ道路に出ようとして気がついた。
橋がかかっていた。家の門から道路の、小さな空間に。
確かに記憶を辿ると長旅で疲れて車から降りた私に誰かが注意したのを微かに思い出した。
あの気持ちが良いと感じる正体はこの小さな橋の下を流れる川のお陰なのかもしれない。

実は東京から県にうつるなんて嫌で嫌で反対していた。だから引越しの昨日まで一度も足を運びはしなかった。
しかし今は来て良かったと思う。回りをみれば同じように門から道路までを小さな橋が並び、目の前には草花と石碑の通り。
私はここがいっぺんに好きになった。

「お父さんお母さん!ここ来てよかったよ!」
私がここへ引越すことを少しだけ心配していた父母。
玄関からリビングまでかけて叫んだ。

しかし返事はかえることはない。

結局ここへ住むのは反対していたはずの私だけ。

この街で生きていくのは私だけなのだ。

たどり着いたのは私だけ、私一人が助かった。

引越しの日、高速道路を走っていた私たちの車。後ろから追い越し、前に入ったトラック。そのトラックの荷台から大量の木材。
後ろに乗っていた私は助かったが運転席と助手席は木材の下敷となり父母はその生を終わらせた。

家の前を流れる川の水は静かに流れる。風は空気はほどよく湿気をおびて私のもとへやってくる。

この街は私を癒してくれるだろうか。
この街は私を受け入れてくれるだろうか。

そんな考えが浮かんだ時、また何処からともかく「にゃん」という猫の声が答えるように鳴くのが聴こえた。
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