忍者ブログ
ある方の影響で始めた八神の自由気ままな箱庭
| Admin | Write | Comment |
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
カウンター
最新CM
[08/25 Spooky]
[08/25 八神]
[08/19 Spooky]
[01/24 八神]
[01/16 水城夕楼]
最新記事
最新TB
プロフィール
HN:
八神
性別:
女性
自己紹介:
創作、空想、妄想、その他諸々が好きな八神。
ゆっくりのんびりマイペースなB型。
バーコード
ブログ内検索
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

風が舞う。
風がそれを運びこむ。
「限!」

不意に後ろからの叫びに近い声。
「限、びっくりした。ずっと遠くしか見てないんだもん。そこ、もう柵だよ」

氷響に言われて気がついた。柵の近くまで来ていた私…。

「もうすぐ集合時間だよ、いこ」

びっくりした。
限はここのところ学校には来るし、行事にもたまには参加する。今日の野外授業もそう。
でも個別活動になってふらといなくなった限に気づいてなんとなく不安になって探した。
そうしたら崖からすぐの柵前で足元など見ていない限の姿。思わず声をかけた。

「…そうね。いくわ」
私はどうしてこんな場所へ来たのだろう。何かに誘われるように、そう風を感じて…。
何か感じるものがあったのかもしれない。
それでも氷響に声をかけられて感じられなくなってしまった。

「ここ、風が気持ちいいね」

一緒に歩きながら氷響が笑う。

一緒に歩きながら私が気持ちいいといったら限が少しだけ笑みを浮かべながら答えたようにみえた。

「…そうね」
PR
「限、ずっとそばにいるかい?」
「ええ。ずっとそばにいるわ、揚羽」
「本当に?」

限は普段の行動には見られないようなあわてぶりで状態を起こした。

「…」

外は雨が静かにそれでもまるで自分たちの存在を知らしめるようにさーっと音をたてている。

限の頬にも同じように静かに流れる一筋。

「揚羽…」

流れ落ちるそれをそのままにして、ベットから上体をあげたまま限は静かに雨音に耳を澄ました。
どうかこの雨が愛しい彼の人のもとへ続いていることを小さく祈りながら。

「獅戯、何をしているんですか?こんな時間に」
夜中、台所へ降りた冴晞は甘たるい匂いと台所に立つ獅戯の姿に何事かと尋ねた。
時間には夜中の二時をまわるところ。
台所には既に半分以上できたであろうトリュフやアーモンドが散乱している。
「あぁ明日はバレンタインデーでしたね」
冴晞は妙に納得するとそのまま台所を後にした。
折角冴晞にばれないよう夜中に始めたこの作業もむなしく、獅戯は無言で手を動かすだけだった。

朝、いつもの通り職員室で別れようとした際に獅戯はあくまでさりげなく簡易に包まれた箱を手渡した。
「これ」
獅戯のぶっきらぼうな一言に冴晞は静かに、それでもどことなく嬉しいそうに答える。
「ありがとうございます」
と。
獅戯のかばんには、もう一つだけ綺麗に包装された小さめな箱が用意されている。
眠そうな目をがんばって開けながら学校に通ってくる姫のために。

「二人ともいい子にしていましたか?」
数学準備室に最初に帰ってきたのは冴晞だった。準備室のドアを開けるなり中を確認もせず聞いてきた。
限がかわいくこくっとうなずいた。手には飲みきったマグカップが握られたままである。
神津は声も出さずうなずきもしなかったが、冴晞の方を向いていた。
「二人とも夜は暇そうですね。珍しく二人のために夕食を作りましょう。限、大丈夫ですか?」
「・・・えぇ」
限は短く答えた。獅戯はその言葉に満足し、神津には全く聞こうとしなかった。
「では放課後、またここに集合ということでいいですね。神津、あなたにも限のついでに腕によりをかけますからそれまできちんと授業受けてください。あなただって頭は悪くないのですから出たら100点取れますよ」
神津も限も頭は良い。それをテストや授業に生かそうとしないだけだ。だからこそ、この学校で出席日数がぎりぎりでもやっていけるのである。
神津は自分だけ言われて嫌そうな顔を一瞬したが、限の方に顔を向けた。
「どうする?授業、受ける?」
「言われたのは神津だけでしょう・・・でも、久しぶりに出てもいいわ。どこにいても同じだもの、暇で」
限は小さく笑いながら答えた。
そこへ獅戯がどかどかと帰ってきた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
獅戯のドアと同時の言葉に限は少し嬉しそうに答えた。獅戯もその返答に満足してにっと笑う。
「限、今日の夜、夕食一緒に食べないか?」
獅戯の言葉に冴晞が「全く、同じことを考えてましたね」と笑って答えた。

「獅戯…」
授業を終えた獅戯は軽く質問を受け答えすると職員室に名簿を返すべく向かった。
そこでこの世で腐れ縁というものを実感させる人物の一人である幸に出会った。獅戯は逃げるすべもなくそれでも嫌そうな顔をする。
「お前はもう少しましな顔をしろ」
獅戯の顔を判断していた幸が思わず思ったことを口にしてしまった。
「でなんですか?幸先生。わざわざ俺を名指しで呼ぶなんて」
幸と獅戯はあまり校内で会うことはない。まずお互いに職員室などよりも自分たちの準備室を拠点としている。次にお互い思うがままの行動であり、知り合い同士でじゃれあうタイプではないのだ。
「限がまた貧血起こした。たぶんあまり食べてないんだろ。家に戻せとは言わないが少しは保護者らしく目を回しておけ」
「限は?」
獅戯は態度を変えないよう極力短く促した。もっとも長年の付き合いがある幸にはその行為はばればれだが。
「今は保健室で寝かしている…」
「幸先生、これ職員室お願いします!それでは」
幸の声を遮り、名簿を無理矢理幸に渡し、獅戯は保健室のほうに早歩きで急いだ。
幸はそれら一連の慌てぶりが見たく、獅戯をわざわざ待ち伏せし話したが無理矢理渡された名簿に少しの不満を抱いてみた。
「はっ親バカだねぇ」
誰にも聞こえないような小さな声で幸は一人呟いた。それから小さく笑い、手元の名簿を返すべく職員室のドアに手をかけた。
≪ Back  │HOME│

[1] [2] [3]

Copyright c 八神の藍玉殿。。All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog / Material By Mako's / Template by カキゴオリ☆
忍者ブログ [PR]