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「獅戯、何をしているんですか?こんな時間に」
夜中、台所へ降りた冴晞は甘たるい匂いと台所に立つ獅戯の姿に何事かと尋ねた。
時間には夜中の二時をまわるところ。
台所には既に半分以上できたであろうトリュフやアーモンドが散乱している。
「あぁ明日はバレンタインデーでしたね」
冴晞は妙に納得するとそのまま台所を後にした。
折角冴晞にばれないよう夜中に始めたこの作業もむなしく、獅戯は無言で手を動かすだけだった。
朝、いつもの通り職員室で別れようとした際に獅戯はあくまでさりげなく簡易に包まれた箱を手渡した。
「これ」
獅戯のぶっきらぼうな一言に冴晞は静かに、それでもどことなく嬉しいそうに答える。
「ありがとうございます」
と。
獅戯のかばんには、もう一つだけ綺麗に包装された小さめな箱が用意されている。
眠そうな目をがんばって開けながら学校に通ってくる姫のために。
「二人ともいい子にしていましたか?」
数学準備室に最初に帰ってきたのは冴晞だった。準備室のドアを開けるなり中を確認もせず聞いてきた。
限がかわいくこくっとうなずいた。手には飲みきったマグカップが握られたままである。
神津は声も出さずうなずきもしなかったが、冴晞の方を向いていた。
「二人とも夜は暇そうですね。珍しく二人のために夕食を作りましょう。限、大丈夫ですか?」
「・・・えぇ」
限は短く答えた。獅戯はその言葉に満足し、神津には全く聞こうとしなかった。
「では放課後、またここに集合ということでいいですね。神津、あなたにも限のついでに腕によりをかけますからそれまできちんと授業受けてください。あなただって頭は悪くないのですから出たら100点取れますよ」
神津も限も頭は良い。それをテストや授業に生かそうとしないだけだ。だからこそ、この学校で出席日数がぎりぎりでもやっていけるのである。
神津は自分だけ言われて嫌そうな顔を一瞬したが、限の方に顔を向けた。
「どうする?授業、受ける?」
「言われたのは神津だけでしょう・・・でも、久しぶりに出てもいいわ。どこにいても同じだもの、暇で」
限は小さく笑いながら答えた。
そこへ獅戯がどかどかと帰ってきた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
獅戯のドアと同時の言葉に限は少し嬉しそうに答えた。獅戯もその返答に満足してにっと笑う。
「限、今日の夜、夕食一緒に食べないか?」
獅戯の言葉に冴晞が「全く、同じことを考えてましたね」と笑って答えた。