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ある方の影響で始めた八神の自由気ままな箱庭
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創作、空想、妄想、その他諸々が好きな八神。
ゆっくりのんびりマイペースなB型。
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小さな森に囲われた湖。
足を歩めるつもりで二人は水浴びをしていた。


「緑咲が、・・・・泣いてるわ」
水方は呟いた。

緑咲や火呼と別れてから時は過ぎていた。

「どこかでまた終りがあったみたいね」
風が教えてくれた情報を風音は水方に伝えた。

「ヒトはどうしてこんなにも脆いのかしらね・・・」
水方は呟きながら脳裏に焼きついている自分の過去を消し去った。
「水方ちゃん、違うよ。ヒトは強いよ」
「ヒトはね、必ず来る死を前に強く、強くなる。そうでしょう」
今まで見てきた終焉の土地。そこで最期まで生き抜いた人々。
「そうね。ヒトは脆くてそして強いわね」
それらを思い出し水方はうなづいた。

「さあ、それじゃあ私たちも行きましょうか。どうか誰も最期の時を一人で過ごさないために」

私たちは旅をする。
終焉の土地を見届けるために。

そして、その土地の人々が一人でその最期を迎えないために。
見届ける。
私たち自身の終りがくるその時まで。
それが私たちの業、罪の償い。
私たちの終焉まで、ずっと。
 

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木々が震える。
地面が悲鳴をあげる。
水は地底より吹き出し地上を濡らす。
火はどこからか現れ、水を蒸発させ、風にのり、その広大さを見せつける。

「ここも終わっちゃうね」
緑咲が呟いた。

四人がたどり着いた町はもう、荒廃が始まっていた。
人々は、逃げ惑う者は尽きたのかその中で寄り添って生きていた。
「もう逃げ惑っても意味がないと気がついた方もいるのでしょうね」
水方が諦めたようにいった。それを遮るように風音が続ける。
「まだいるよ!人はそんな簡単に諦めない!」

「所詮足掻く者など自分のことだけさ、周りを見ていない証拠だ」
火呼が嘲笑うように言い放った。

「もう、いいよね?」

緑咲が会話が途切れたのをきっかけに三人に促す。

「いいわ」

三人は町を見下ろせる山へと登った。
かつては緑豊かだったろう山も今は枯れた木々と茶色く変色し萎びかけた葉が少し生えている程度だった。

四人は小さく息をついた。
それから風音が水方が歌い始める。すぐに緑咲も火呼も続く。
四人のハーモニーは大地へ響き、終りがくるまで歌い続けた。
「好きだよ」

たった一言が言えなかった、最期の夏。

「助けて」

たった一言が言えなかった森の中。


私はどこまでこうして言えずにいくのだろう。

どこまで。


「風音さん、好きです」

だから言われた時、嬉しく思うけど嫉妬する。

目が冷たくなる、顔が歪む。
風が唸る…。

誰か私を救ってください…。



「風音」

私の言葉に答えるように水方は現れた。

「風音、大好きよ」

水方はゆっくり微笑んだ。
夏の暑さがとれていない九月。
彼らがやってきた。
兄弟だといった彼らはその顔も性格もあまりに違いすぎていた。
「ボクのほうがちょっとだけ上なんだ」
緑咲は転入したての頃よく話していた。
火呼は何も言わずただ緑咲とあまり離れようとはしなかった。
調理実習の時だって…。
「わっ」
「えっ緑咲くん、大丈夫?!」
「血…」
「緑咲!見るな!」
あのときはすごかった。
緑咲の指は包丁で流血。
違う班だった火呼は気づくなり叫んで、そのまま誰にも何も言わず教室を飛び出して。

あっ死ぬ前に考えたせいかな、緑咲の顔が。
泣いている顔をみたきがした。


「これで終りか…」
「…うん。ここも終ってしまった」
「あいつ笑ったな、最期に」
「やっぱり最期に笑われるとこっちが痛いよ。安らかに眠ってくれると、いいな」
緑咲はそっと火呼の肩に頭を垂らした。
火呼は何もいわなかったが火呼の肩は少しだけ震えてその方は薄く濡れていた。

ゆっくりとゆっくりと・・・砂紋が広がる。
それはまるで砂のお城・・・・。

「今日からクラスメイトとなる風音です。よろしくお願いします」
また新しい日々が始まる。
ここもあと少しで滅びようとしている。
それを知るのはほんの少数。
だからだろうか、この笑顔は。
彼らに未来はないというのに、その顔に広がる・・・。
「風音・・・」
思わず、涙が溢れる。
こんな滅びをみているもう一人の自分を創っても、冷静さを漂わせても、それでも弱い自分はあくまで自分の体の主導権を渡さない。
よこで水方が少しだけ呆れている。
もう何度目だろう。
こうやって勝手に思って、勝手に涙する。
それでもいいと思う。
水方も何も言わない。
だけど、
だけど強くなりたいとも願う。
全ての滅びをとめられるような強さでなく、その滅びを受け入れられる強さを。

「水方ちゃん、今日もごめんね」
家に帰って水方に謝った。それに水方は笑顔で答える。
「別に構わないわ。それにそれが、風音の優しさだと私は知っているもの」
水方は静かに笑った。だから私も笑顔する。

そうやって強くなろう。少しだけ、少しずつ、その歩みを止めなければ決して進まないことはないのだから。
そしていつか、いつの日か、この滅びを受け入れられる強さを。

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