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ある方の影響で始めた八神の自由気ままな箱庭
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創作、空想、妄想、その他諸々が好きな八神。
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これって使い方あっているのでしょうか(笑)
(仮)かもしれませんがつけてみました。

水方(みなみ)
風音(かざね)
火呼(ひこ)
緑咲(つかさ)

主にこの四人の物語。




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また、街が滅んだ。

「皆こうやって消えていってしまうのね。ナニモノも抗うことなく…」
何もないただ荒れ果てた大地の中に二人の姿。水方はただ呆然と何もなくなった土地に以前の街の姿を重ねて静かに言葉を紡いだ。別にそれはもう一人の、風音に向けられた言葉でもなかった。
風音は地面に片膝をつき、風を聞いていた。
「聞こえた・・・」
「え・・・」
ふと風音が声を出した。耳に手をあて、更によく聞いているようである。特にそちらに意識をしていなかった水方は小さな言葉で答えた。
「風の終わり、ここから南のずっとずっと先だって」
風音は満足そうに言葉を紡ぐ。それに小さく体を丸めるように水方が答えた。
「そう」
ここは風が強く、普通の人間であれば寒いと感じる。けれど二人にとってそれは感じえない感覚。それをわかっていて風音は言った。
「行こう」
それは何のためらいもなくただ二人だけに紡がれた言葉。しかしそれに水方は戸惑いを隠しはしなかった。
「でも、」
一言否定の言葉を言おうとし、言葉を区切った。それでも意を決したようにまたすぐ言葉を紡ぐ。
「またこうやって、皆亡んでしまうのよ」
それは普段あまり感情を出さない水方には珍しい感情の言葉。
「うん、知ってる」
けれど風音にはそんな水方も水方であり、慣れたようにそれを肯定した。それからやはり一呼吸おいてまた続ける。
「会っていた人が皆いなくなっちゃうのはすごく悲しいと思う。けど、・・・一人で死んでいくのはもっと悲しいの。一人だって思って考えて、それでも一人で。だから私は行くよ、亡んでしまうとわかっているから行く」
風音はまっすぐな瞳でそれらを語った。それは風音が経験したこと。自分自身で経験したからこそ風音はそれをやめようとするつもりはなかった。そして水方もただ、一人で死んでいった身だった。
「そう。そうね、一人は寂しいわ」
それは水方の気持ち。けれどそれは風音の「行こう」という言葉の答えでもあった。
そして二人は静かに南へと、滅びの地へと向った。

「雨、だ」
緑咲はふと呟いた。傍らで寝そべっていた火呼は緑咲の呟きを聞いて何気なく空を仰いだ。
「おい、晴れているぞ?」
仰いだ空は真っ青で少しだけ雲が浮かぶ程度のとても降りそうな天気などではなかった。そして火呼は思ったことをそのまま口にする。その言葉に緑咲は今まで宙にあった視点を火呼へと向けた。
「空じゃ、ないよ」
緑咲はただ一言感情のない言葉を紡いだ。それからまた視点を火呼から逸らしどこか遠くを眺めた。それからひざを丸めて、小さくなる。そして言った。
「自然が・・・泣いているんだ」
その目は遠い。火呼はその視線の先を追おうとしてやめた。緑咲は視線をそのままで更に言葉を紡いだ。
「あそこはもうすぐ終る。自然を壊しているから。自らの過ちに気が付くことなく滅んでいく」
その言葉は相変わらず感情のない言葉。火呼はなんとなく緑咲の目が揺れたように見えた。だから声をかけた。
「行くか」
火呼のその一言に緑咲の視線は心は全ては火呼のもとへと帰る。それを確認した火呼は更に付け加えた。
「そこに今日中には着きたいな」
それは同意の言葉。ほんとに最小限の言葉を緑咲は正確に読み取り、そして火呼には気づかれないように静かに笑みを浮かべた。

お兄ちゃん。

「夢か。」
目が覚めた俺は自然に寝返りをうった。そのことで起こった微妙な音に緑咲が反応する。
「ん?火呼。どうしたの?」
緑咲は空を見上げていた顔をこちらに向けて聞いてきた。しかしながら、いくら緑咲といえども夢の話などする気にはなれない。
「いや、なんでもない。それより起きていたんだな、緑咲。」
「うん。こんな星が綺麗な夜はね。寝るのがもったいないんだ。」
緑咲は膝を抱え、愛おしそうに大地を見ながら静かに言った。
「そうか。」
その感覚を俺は知らない。だから適当に相槌をした。
「あと、どれくらいもつのかな。」
俺は答えなかった。答えられなかった。それに緑咲自身も別に答えてほしいわけではないだろう。
「空はまだ綺麗なのに、もったいないよね。」
「そうだな。」
世界は破滅へとどんどん足を進めていく。
俺たちはそんななかを生きている。

お兄ちゃん。

夢から覚めたのに、まだあの声が途切れない。
あの声が現実だったのはとうの昔だというのに。

「ねぇお兄ちゃん。森に行こうよ。」
「蛙の卵がね、孵ったの。今おたまじゃくしがいっぱいよ。」
「げー、あんなののどこがいいんだよ。」
「とってもかわいいのよ、おたまじゃくしって。えさをあげるとね、みんなよってくるの。」
「お前さ、わかってる?それらがみんなあのぬめぬめの蛙になるんだぜ。」
「うっ。そっか。おたまじゃくしは蛙になるんだもんね。でも、蛙は嫌だけど、おたまじゃくしはかわいいよ。」
「だから見に行こうよ。」


「お兄ちゃん!お兄ちゃん!!」
「かすみ。どこだ。」
俺が気が付いたとき、それはもう家が炎に包まれていた。そのなかを俺はなんの迷いもなく、妹を探した。
「お兄ちゃん、ここ!かすみはここ!!」
「かすみ!ドアを…」
「だめ、開かないの!無理なの。だから、コホコホ。逃げて。お兄ちゃんは逃げて!!早くしないと火が回ってお兄ちゃんまで、逃げられなくなっちゃうから。」
「だめだ。かすみ、ドアから離れていろ。」
かすみのいる部屋のドアを思い切り力任せに開けた。その時俺は本当に妹のためなら何でも出来ると心のどこかで思っていた。
「開いた!かすみ!!」
「かすみ!」
「お兄ちゃん。逃げて。あのね、かすみはね、お兄ちゃんのこと大好きだよ。だから逃げて、お兄ちゃん。」
けれど、やっとドアを開けたところでもうかすみの部屋は炎だけだった。本当に崩れる寸前だったのだ。俺がドアを力まかせに開けた衝撃のせいなのかはわからないが、かすみの言葉の間に、俺とかすみの間を瓦礫が埋め、最後の声を最後に全ての部屋の天井が崩れていた。
「かすみ―!!」
その時俺は必死の無力さを声に表すことしか出来なかった。

「火呼。」
「っ。水方か。」
優しくもなく、けれど冷たくもない声で水方は俺の今の名を呼んだ。
「朝よ。」
「緑咲は。」
「出かけたわ。」
水方は用がなければここへ来ることはめったにない。ということは緑咲が頼んだのだろうか。
「そう。俺の寝言聞いていた?」
「別に。あなたの寝言なんて興味ないわ。」
「ふーん。まあいいけどな。」
どうせ、水方は聞いていたとしてもそのままなのだろう。そういう女だということは出会った時から知っている。

俺はあの時、死ななくてよかったのだろうか?
どちらにしろ、ずっと忘れない。
大好きだった妹かすみを。
今の生活がどんなに楽しくても、今がどんなに幸せでも。逆にたとえ今が苦しかったとしても、俺は忘れない。
それがかすみにしてやれる最後のことだと思っている限り。

「これ、なに?」
緑咲は街に着くなりいきなり聞き出してきた。
「ん?雪、か?」
火呼はめんどくさそうに、緑咲の問に答える。
「雪?こんなの初めて見た。白くて、冷たい」
緑咲は嬉しそうにでもこわごわと雪を見、触れる。
「そうか?」
緑咲の顔を見ながら、火呼は静かに過去を思い出していた。
『お兄ちゃん、見て。雪降ってきたの。つもるかなぁ』
不意に緑咲と妹の顔が重なる。
「火呼?」
雪と戯れていた緑咲が火呼の表情に気が付き、呼び止める。
それに火呼は気が付き、一言「なんでもない」と行って歩き出した。
こういう時、緑咲は何も聞いてこない。ただ何もしゃべらずにそばにいる。
だからなんとなく緑咲のそばは居心地がいいと思うのだった。

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