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ある方の影響で始めた八神の自由気ままな箱庭
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自己紹介:
創作、空想、妄想、その他諸々が好きな八神。
ゆっくりのんびりマイペースなB型。
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「!!」
夜、何かどうしようもなく目が覚めることがある。
私たちは人ではないから夢をみるわけではない。みるのは、みられるのは過去、だけ。
隣で寝ているみなみの方から衣擦れのような音が聞こえた気がして、なんとなく水を飲みに部屋を出た。

「きれい」
廊下の窓から見えた月に思わず呟いていた。
ここももうすぐ終わる、終焉の町。
ここの月はなんのせいなのかは知らないがいつみても霞んでしか見えない。
けれど私は嫌いではなかった。

空を見ていた目線を戻すとそこには火呼がいた。
「風音、」
火呼は名前だけ呼ぶと、そのまま傷ついたような痛そうな、そんな顔をして去っていった。
火呼、そう名前を呼ぼうとして気が付いた。
私の頬に伝う一筋の流れ。それは本当に無意識でいつから流れていたのかもわからないほど。
これをみて、火呼は何を思ったのだろう?あの顔は何を・・・そう考えても聞けない。なんとなくわかる。あの顔は人であった時のモノ。聞いても何も出来ない。それなら聞かない。聞かないことも優しさだと知っているから。

私はもう一度空を見た。この終焉の空は人で終わっていたら見ることのなかったモノ。
これでよかったのだろうか。
一瞬そう考えて、部屋にもどることにした。みなみのいるあの部屋に。

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「ねぇ。大きくなったらぼくと結婚してくれる?」

「うん」

そう言われたのは、そう答えたのはいつのことだったのだろう。

それは昔。過去の記憶。

 

「おはよう。みなみ?どうしたの?」

下駄箱を開けたままの状態で動かなかった私にクラスメイトが反応した。それから、私の下駄箱を見て笑った。 

「今時こんな古典的なことするやつ、いるんだ。下駄箱に手紙なんて。」

「・・・そうね。」

私はあの幼い頃のかすかな記憶を思い出しながら答えた。その間と記憶を呼び起こしていた時の笑みにクラスメイトは反応する。

「何?みなみ。…もしかしてうれしい?」

「そう…ね。うれしいのかもしれない。」

目の前の手紙を前にして、私は遠い過去の記憶を思い起こした。あまりにも遠すぎてすっかり忘れていた記憶。そしてなつかしい感情。特定の誰かを愛おしいと想う感情。それらは一瞬だけ今の私を優しく包み込んでくれた。

 

その手紙は誰かが一生懸命書いたもの。それはわかっている。けれど返事はしない。

その人に答えられない。わかっているのに会うことを私は躊躇った。ここはもうすぐ終わる。私は人ではないから、水の化身だから解ってしまう。水は終わりを告げた。今、会ってしまえば私の記憶に人が増える。滅び行く人の顔が。

私は自分勝手だから、その人物の最後を幸福で満たすこともしない。偽りの幸福など私はほしいと思わないから、だから誰にも捧げない。けれど全てを断り、どん底へなっている状態にすることもしない。ただ可能性への希望と否定への不安。その間で止める。だから返事はしない。人を見殺しにする私にとって、それが優しさ。私が許せる優しさ。そして私自身の安らぎ。

私は人と偽って生き、それぞれの終わりを見てきた。けれど私の記憶に残る人々は消えることがない、私が存在する限り。

夜、夢を見る。それは過去の遺物。過去の記憶という名の夢。それは私が人としていた時、それから化身となって終わりを見届ける時に出会った人々。それに私は魘される。何も出来ない自分をせめて…

 

一人は嫌い。けれどここも終わってしまう。人は皆死んでいく。それを見届けたら、私はまた新たな地へと向かう。一人は嫌だから。

 

それはまだ風音とも出会う前。私の過去の記憶。

『大きくなったら…』
「っ。…夢…か。」
昔大きな約束をした。私をお嫁さんにしてくれると言って笑った男の子。ずっと、ずっと昔。私が5歳かそこらで、幼稚園の砂場で言われた言葉。守られなかった約束。男の子は少年になり、青年になり、結婚して、暖かな家庭を築き上げて、熟年になり、老人になり、静かに息を引き取った。もうずっと昔。
「みなみちゃん?」
思いの渦に捕らわれていた私を現実に引き戻したのは風音の声だった。カザネとはもうずっと一緒にいる。確か会ったのは世界の荒廃が始まってきた頃。彼女は風と一緒にやって来た。もう何百年も前のこと。あの頃は荒廃が始まったばかりで、まだ自然もあり、綺麗な水や風や…色々なものがあった。けれど今はもう、綺麗なものなど数えるばかりとなっている。少なくとも、今私たちがいる場所はもうすぐ終わる。もう終わりまで近い。それでも人間は最後まで気づかない。そうして荒廃は続いていく。それはとまらない。人間が世界を汚し続ける限り。そして全てを飲み込んだとき、また新しいなにかが生まれるのだろう。私は十四で一度死に、水の化身となった。風音も同じく、一度死に風の化身となったと前に話してくれた。そうしてこの現実に束縛されている。死んだ時からずっと。
「みなみちゃん?寝ないの?」
風音が心配そうに聞いてくる。私はいつもの笑顔で風音のほうを向き答えた。
「うん。大丈夫。もう私も寝るわ。だって明日は学校だもの。起こしてごめんなさい、風音。」
「ううん。おやすみなさい。」
そう風音の前で弱音は吐きたくない。私のほうが長く現実に留まっているから。それにこの漠然とした不安を取り除いてほしいわけではない。だってその不安は生きている者の、人間の証だと思うから。

 「あっみなみちゃん、おはよう。」
今日も風音は屈託のない笑顔で挨拶をしてくる。けれども風音にも不安や色々な思い出で胸が塞がれることがあるのを知っている。ベッドで夜中に泣いていることや、夢を見て泣いていること。知っていて私は何も言わない。だから風音も何も聞いてこない。私も風音も相手に知ってほしいときは自分で話せばいいということを知っている。だから相手が言うまでは何も言わない。いつもの朝と同じ、朝食を食べて、歯磨きをして、着替えて、髪を整えて、風音は毎朝と同じ行為をして、私と一緒に家を出た。
「今日から新学期だね。」
「えぇ。そうね。」
「誰か転入生来ないかな。」
風音はいつもと同じで楽しそうだ。けれど私はあまり転入生や新学期は好きじゃない。だって、それは私たちを知っている人間に会うかもしれないから。私たちは一度人としては死んでいる。今も、人間と関わり、学校へ通い、人として暮らしているがこの身体は成長しない。そのため、大体中学を入学して、卒業するという繰り返しか転校を繰り返す。金銭面などの問題は大抵が化身という人ならざる存在でどうにかなる。けれど成長だけはどうにもならない。転入生はまだいいが、問題は教師である。同じ顔、同じ名前、それではどうみても怪しまれてしまう。そうなったらしばらくは人の世界と交えることが出来なくなってしまう。けれど、どんなに大変だろうとやっぱり元が人間だった私たちは人として生きたい気持ちを捨てられていない。それがこうした問題を呼ぶ。そうわかっていてもやっぱりやめられなかった。

 「あー、新学期を向かえ、長い休みから授業へと切り替え・・・」
体育館で校長先生の話が始まり、生徒ならびに教師はそれに一応聞き耳をたてている。そんななか私は教師席が気になってしょうがなかった。今のところ見慣れない教師の中に知った姿はない。しかしあまり油断はしたくなかった。そうして、新任の教師の紹介が始まった。更に神経を尖らせ壇上を観察し、見知った顔がないことを確認し、ほっと息を吐いた。
教室に戻り、担任を待つ。クラス替えがあったものの、風音とはまた同じクラスになれた。今年の担任は、名前を知らないので新任の教師だとわかったっていたが先ほどの始業式で知った顔がいないことでほっとし、何も聞いていなかったので、どんな教師かは知らない。大体10分程度他のクラスとは遅れてやっと私たちの教室にも教師が入ってきた。
「遅れてごめん。えーと。」
そう、少しせわしなく入ってきた教師をみて私は声をもらした。
「どう…して…。」
そうしてそのまま意識を失ってしまった。

 気がつくと保健室だった。あの教師が私を運んだ。その事実に、私は吐き気を覚える。あの顔を忘れることはない。もうずっと昔とはいえ、忘れられない顔。
「みなみちゃん?」
カザネが心配そうな顔で私を見る。カザネにはこんな顔してほしくない。だから私は微笑する。
「大丈夫よ。」
と。

 あの教師は、昔私を殺した男。当時私の塾で講師をしていた。なんという因果なのかしらと思う。昔は塾講師で今は教師。もちろん私が人として生きていたころの話。だからあの男は私を殺した男ではない。けれども、いわば生まれ変わりといえるあの男は私にとって私を殺した男と同じだった。前世の記憶だなんだとテレビで言っているがきっとそれはないだろうと思う。けれど私は人だったころの記憶もあるので、あの男を恐怖しないではいられなかった。
そうあの日。いつものように最後まで塾に残って勉強していた。そうして気がつくと誰もいない。ただあの男が講師面で教室に入ってきた。そして暴行しようとした。だから逃げた。けれども入り口はあの男がいる出口ひとつだ。そのため、逆の窓のほうに自然と動いた。しかし三階。降りるわけにはいかない。そうして窓にへばりついて動けなくなった。恐怖で足がすくむ。あの男はそれを楽しむように窓を開けた。きっと私がどこまで身体をそれるか楽しみたかったのだろう。恐怖ですくむ体とは反対に頭は至極冷静だった。だから飛び降りた。そのままそれるように自分から飛び降りた。下は川だったが、水深は浅い。だから助かりはしない。わかっていた。わかっていたがこのままこんな男に暴行されるくらいならというほうが大きかった。だから私はそのままためらいもなく勝ち誇った顔で飛び降りた、あの男の目の前で。
結局川に落ちて私は死んだ。けれど水の化身となった。だからここにいる。死んだとはいえ、記憶は残り、結局はあの男に恐怖したままだった。

 「おー、気がついたか。大丈夫か?」
あの男が入ってきた。風音が席を立とうとしたが私は小さく入り口のあの男には聞こえないようにつぶやいた。
「いかないで…。ここに…いて。」
声が震える。それを確認すると同時に体も震えをきたすのがわかった。
風音は無言でそのまま私の横に座ったまま教師を、あの男を見た。
「ご心配をおかけしてしまい申し訳ありません。」
近づいてきた男に声も固まる。それを無理やりしぼだせたのはこれだけだった。その後を風音が続けてくれた。
「先生、今日はもう終わりだから私たち、帰ります。」
「あっあぁ。それがいい、かな。送っていこうか?」
私は風音に目で訴える。
「いいえ。大丈夫です。私が一緒に帰りますから。」
「そうか。じゃあ気をつけてな。」
そういって教師は出て行った。
「みなみちゃん、大丈夫?」
「…ごめんね。水もらえる?そこのでいいから。」
「うん。」
風音から水を受け取り飲んだ。すっと体がすっきりする。私は水の化身だから。水は私の味方だ。水がある限り私は生きるだろう。
私はあの男のそばでは何もできない。時が経つほど大丈夫になるものは多かったがあの男はだめだった。けれど昔のように命を絶つことはできない。それにそこまでは必要ない。今は縛られていないのだから。私を縛っているものは水だけだ。
だから私は逃げる。なんと言われてもいい。あのときできなった選択を今私は選ぶ。
「風音。私転校する。」
私の一言に風音は少し驚きつつも笑った。
「じゃあ今度はもっと北にいってみようよ。」
「一緒にいく?」
「うん。もちろん。だって私はみなみちゃんと一緒にいたいもん。だからみなみちゃんがだめっていってもついていっちゃうよ。」
不意に涙があふれる。うれしかった。あのとき、もっと生きていたら、川で死ななかったら、化身にならなかったら出会えなかったかもしれない存在。私の今とても大切な同類。私はカザネをみながら思った。
今度またあの男にめぐり合ったときは逃げずに、ほかの選択があるかもしれないと。

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