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ある方の影響で始めた八神の自由気ままな箱庭
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八神
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女性
自己紹介:
創作、空想、妄想、その他諸々が好きな八神。
ゆっくりのんびりマイペースなB型。
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「一緒に住もう?」
小さな私の背中に寄りかかったのは緑咲だった。
どうしてそういう結論になったのかはわからない。
けれどそれは緑咲なりに出した答え。
だから私は緑咲を真っ直ぐ見つめてそれから答えた。
「いいよ」
出会ってしまったから離れるなんて悲しすぎるから。
きっと私たちの時は長い。滅びへと向かっているといえども決してここは狭くはない。
だからこそいつか誰かから先に滅ぶまで私たちは四人でいると思う。
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静に歌う声がした。小さな小さなコエ。
聴こえたから、それに向かっていった。
「誰?」
まだまだやっと姿を確認したあたりだったのに彼女は美しい声でオレを睨んだ。ただよく見たら幼そうだった。声とは違い十代の体つき。オレはもっとよく見ようと近寄った。
けれどそれに彼女は過剰に反応し、急に霧が立ち込めてみえなくなった。反射的に彼女のいたほうへと走りよったが無駄だった。それどころか彼女がいたのは水面だったかのようにいたあたりはオレの半分を濡らす湖があった。
「嘘だろ…」

この話は誰にしても信じてはくれなかった。夢でもみたのだろうと。
いつかまた会えないだろうか、そう願った。最期まで。

「まただわ」
水方は苦笑しながら呟いた。すぐ隣で自分の髪をもてあそんでいた風音が反応する。
「水方ちゃんはヒトを惹き付けるのね」
それは風音の素直な反応。
彼女たちはヒトではない。そして彼女たちはヒトでもあった。なぜか最期に思い続けた会いたいという気持は彼女たちに届く。それはまるで化身になった彼女たちにヒトというものを忘れさせない罰のように。
「…ありがとう。想ってくれて」
また静に一つ消えた。どうか導きの中に歌を。
水方は今日も歌う。水の旋律を奏でながら。
静かに迫る。
小さな小さなその生命さえも奪う破滅。

「水方ちゃん」
緑咲は教室でふと水方を呼んだ。予感だった。何かが来る。一刻も早く確認しないと。気だけ、何かわからない焦りが渦巻く。
そんな考えは微かに顔に表れていたらしく水方は正確に読み取った。
「私はどうしたらいい?」
水方は単刀直入に聞くことにした。事によってはすぐに行動を要する場合がある。
緑咲は自分よりも正確にこの思いを読み取ったのではないかと少しだけ考えた。それから更に考えを巡らし一度下を向いてから静かに水方の目を見た。
「水を…地脈を知りたい。あと…雨の動き」「わかったわ。上に行きましょう」
水方は言い終わると回りには目もくれず先ほど上と示した屋上を無言で目指した。
屋上の重い錆びたドアを開けると微かに雨の匂いがした。
「気づかなかった。ここは雨が破滅を呼び起こすのだわ」
「やっぱり…そうなんだ」
本当は確かめたかった。これは違うのだと。これはまだ破滅の前の印だと。けれど水の化身である彼女が言う。雨もまた水の化身。外れることなどない。
「ここはこんなにも早く滅ぶなんて」
ここに来て、まだ一週間も経っていない。最初の読みから変わってしまった。これも破滅が破滅を呼んだせいなのだろうか。
「緑咲…。私はこの雨を操ることは出来る。けれどしないわよ。ひとつの歪みはやがて大きな歪みを引き起こすことがあるのだから」水方は緑咲の方に背を向けて言葉を紡いだ。それは一瞬だけ緑咲の頭をよぎった言の葉。「大丈夫。ボクもわかっているから…わかってみせるから」
ただ涙が溢れた。それを察した水方は緑咲の方を向きそれから迷わず抱き締めた。

朝、いつもと違う声に起された。
「火呼、起きて。学校行く時間だわ」
静かな、それでいてどこか冷たい。俺にとって気持ちのいい声を出す。
「おはよう、水方」
布団で寝返りを打ちながらしっかり水方がいるほうへと顔を向ける。それから、
「それ以上やられたら緑咲にあることないこと吹き込むわよ」
俺は思わず出しかけていた手を引っ込めた。しかしそういった隙のない水方が好きだ。もっともそれ以上何かやろうとすれば本当に緑咲に色々吹き込みそうなので無言で布団を出た。
緑咲は純粋だ。その純粋さは化身となり体が成長を止めた今でも変わらない。けれど俺を含めたほかは違う。化身としても心は成長する。身なりは子供でも十分に表情が変わる。
「なあ水方、緑咲のことどう思う?」
俺はベッドから廊下へ向いながら一歩後ろを歩く水方に問いかけた。
「どうかしら?火呼の意図とすることがわからないから答えられないわ」
相変わらずすっとかわされてしまった。こうなっては何かこちらから情報を加えるまでは何も言おうとはしない。
「で、今日緑咲は?なんでいないし、水方が俺を起こしに来たの?」
「緑咲は一足先に学校よ。ほら今の学校、うさぎがいるでしょう?早く行けばうさぎに餌をやっていいと言われたらしくて喜んで早起きしていたわ」
俺はその光景を想像して思わず立ち止まってしまった。
「あら、どうしたの?」
「いや、似合っているなって。うん、あいつはあいつのままのほうがいいな」
俺は妙に納得してうなずきながら水方に語ってしまった。
「ふふ、火呼ったら今日は随分と大人らしいと思ったけれど―」
「じゃあ、水方。好きだよ」
「あら・・・わ・・・」

「火ー呼ー!朝だよ。もう枕なんか抱えてキスしそうな体勢。何の夢みてたの?」
オレは緑咲の声で目が覚めた。それはもうぱっちりと。
「うるさいなー。朝ってわかっているよ。すぐ起きるし」
「ちょっとー、二人とも早く起きてよー。早くご飯食べて学校行かないと遅刻するでしょー」
ドアの向こうから朝から元気な風音の声がする。そしてダイニングでは水方がいつものように朝食の準備をして待っている。たぶん行ったら「おはよう」って言うんだろうな。毎朝と同じように。
最初、オレは緑咲以外と一緒に時をすごすつもりはなかった。けれど、誰が言い出したか忘れたけれど、こういう四人の暮らしも悪くない。そんななかで見せた夢は夢で終る。それは望んだわけではない、きっと未だ残るヒトの時の記憶が生み出したもの。
「ほら火呼、行こう」
「あぁ」
いつかオレたち自身が亡ぶまで、この生活が続けばいいとどこかで思った朝だった。

「まだ、起きていたの?」
夜、カーテンの隙間から見えた小さな星を今でも覚えている。

あれはまだ、人であった頃。それから、確かあの星を見た日はお父さんやお母さんと別れる前日。
昼間から昼寝をしていて夜、なんとなく眠くならなかった。だから空を見ていた。空、といっても窓はカーテンが閉まっていていつもなら見えない。ただ、その日は本当に偶然に少しだけ小さな隙間が見えていた。そして小さな小さな星を見ていた、ただぼんやりと。

次の日、あの森のなかの建物に連れて行かれて、お父さんやお母さんに会った最後の日でもあった。
最初はそこの空間にも馴染めなくて、両親に置いていかれたという気持ちが強くてただただ泣いていた。それからあの小さな小さな星を思い出した。あのカーテンの隙間から見えた星は一人ぼっちだった。そしてあの頃のぼくも一人ぼっちだと思っていた。
けれど、そっと夜ベッドから抜けた時、空にある星は一人でないと知った。それから更に暫くしてぼくも一人でないことを知った。

「ねぇ火呼、学校行ってみたいんだ」
それは緑咲が言ったさりげない一言。そうさりげなく言おうと緑咲は努めたのだろう。けれど火呼にはわかってしまった。それが本音だと。だからこそ反対などできるはずもなかった。
「いいぜ。でもさ、何でお前はそんなとこ行きたいんだ?」
ただなんとなく同意するのも微妙だった。そう考えた火呼はなんともなしに問を付け加える。特に考えたわけでもなかった。ただ思った。
「・・・友達を、ね。いっぱい作ってみたいんだ」
少しはにかむように緑咲は小さな声で答えた。

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