「まだ、起きていたの?」
夜、カーテンの隙間から見えた小さな星を今でも覚えている。
あれはまだ、人であった頃。それから、確かあの星を見た日はお父さんやお母さんと別れる前日。
昼間から昼寝をしていて夜、なんとなく眠くならなかった。だから空を見ていた。空、といっても窓はカーテンが閉まっていていつもなら見えない。ただ、その日は本当に偶然に少しだけ小さな隙間が見えていた。そして小さな小さな星を見ていた、ただぼんやりと。
次の日、あの森のなかの建物に連れて行かれて、お父さんやお母さんに会った最後の日でもあった。
最初はそこの空間にも馴染めなくて、両親に置いていかれたという気持ちが強くてただただ泣いていた。それからあの小さな小さな星を思い出した。あのカーテンの隙間から見えた星は一人ぼっちだった。そしてあの頃のぼくも一人ぼっちだと思っていた。
けれど、そっと夜ベッドから抜けた時、空にある星は一人でないと知った。それから更に暫くしてぼくも一人でないことを知った。
「ねぇ火呼、学校行ってみたいんだ」
それは緑咲が言ったさりげない一言。そうさりげなく言おうと緑咲は努めたのだろう。けれど火呼にはわかってしまった。それが本音だと。だからこそ反対などできるはずもなかった。
「いいぜ。でもさ、何でお前はそんなとこ行きたいんだ?」
ただなんとなく同意するのも微妙だった。そう考えた火呼はなんともなしに問を付け加える。特に考えたわけでもなかった。ただ思った。
「・・・友達を、ね。いっぱい作ってみたいんだ」
少しはにかむように緑咲は小さな声で答えた。
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