12月。
ここは昔、秋の終りから雪が積もっていない日はないほどの土地だった。
それなのに12月になった今でも雪は気配さえしなかった。
「雪の匂い…」
ふと風から感じた、ツンとするようなすっきりしたような変な感じ。
雪が近い。
「緑咲、雪降ると思う?」
側にいた緑咲に声をかけると緑咲は空を見上げた。それから風音の方を向くと笑った。
「風音ちゃんや水方ちゃんみたくわかるかなって思ったけどぜんぜんわかんなかった」
緑咲が笑って答えてすぐに空には白い花が舞い始めた。
「降って来たね。綺麗だな」
緑咲が本当に心の底からそう言ったように聞こえた。だから風音も答える。
「うん、綺麗」
自然が作り出すものは綺麗。けれど、この滅びゆく世界でこの綺麗は一体いつまで続くのか。
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