「かーごめ、かーごめ、かーごのなーかの・・・・」

この町に引っ越して一週間。学校の通学路を少しだけそれたところに古い神社を発見した。そしてそこから聞こえる子供の声。特に気にもしなかった。次の日、この話が話題になるまでは。

「あーあ、今日人死ぬねー」
クラスメイトの突然の言葉に私は目を見張った。
「えっどうしてそんな」
「ん？セナは聞かなかったの？朝の声」
クラスメイトはさも当然のように答える。それに他の皆も同意した。
「今日のはすごかったよね。大きかった。うちでも聞こえたもん」
「誰だろうね・・・やだな、帰ったら誰か死んでたなんて」
あとで聞いた話、それは地獄鷽という鳥らしく、それが鳴くと人が死ぬらしい。そしてそれから更に話題は変わっていった。
「あーねぇヨーコ。また子供いなくなったって聞いた？」
「うん。セナ、この話は知ってる？」
「えっなに？」
「カゴメの話」
「知らない。カゴメってあの、かーごめかーご――」
ヨーコは急に私の口を掴んで押さえつけた。それに思わず抵抗する。
「ばか、この辺でその歌は禁句だよ。特に神隠しが起こっている今は」
「もうセナほんとに知らないんだね。それはさ、この辺で神隠しが起こった時は忌み歌とされるんだよ」
「忌み歌？」
私は本当にわけがわからなかった。今まで都心にいた私にとってそれはおもしろくもばかばかしい地域に根づいた話だった。
「それで子供を選別するんだって。あれで、最後にあててしまった子は天狗に連れて行かれるって」
「へー。で連れて行かれた子はどうなんの？」
「戻ってこないよ。確か・・・前はやったときはちーちゃんとこのお姉ちゃんがいなくなってるよね」
「う…ん。小さい頃だから私は知らないけど」

「かーごめかーごめ、かーごのなーかのとーりーは・・・」

あんな話を聞いた後、一人での帰り道に思い出した。昨日の神社で聞いた歌。あれは間違えなくかごめかごめ。神隠しが起こっている今、忌み歌とされているもの。
私は好奇心と昔話を信じない子供がどんなかを見てみたくて神社に向った。
やっぱり声が聞こえる。それも何人もの子供の声。
「こんにちは」
ふいに後ろから声をかけられた。それに一瞬びくっとするも後ろにいた六、七歳の子供に笑顔で答える。
「こんにちは。何、しているの？」
「かごめかごめ。お姉さんも一緒にやろう」
子供は元気よく私の手を引っ張り、茂みの奥へと連れて行った。そこには何人もの子供が遊んでいた。
「ねぇみんな、お姉さん連れてきたの。一緒にかごめかごめやってくれるって。やろう」
私の手を引っ張った少女が皆に声をかける。そしてその少女は私をみて、にっこりと笑った。それから。
「私、お姉さんのこと気に入ったから当ててね」
そう言われた。

「はい。お姉さんが鬼だよ。まんなか。いくよー」
かーごめかーごめかーごのなーかのとーりは、いついつ・・・・

うしろのしょうめんだーあれ

「あーえっと、そうね。さっき私をここへ招いてくれた子ね？」
私は考えつつも何か確信を持っていた。それを聞いた満足そうな声が後ろから返ってきた。
「よかった、お姉さん。これでお姉さんも仲間だよ」
「えっ？」

あれからずっと遊んでいる。かごめかごめ。少しずつ仲間が増えていく。少しずつ。
少しずつ誘う、この世界へと。

かーごめ、かーごめ、かーごのなーかの・・・

「ねえお姉さん、次はどこに行きたい？いっぱいいっぱいお友達つくろうね」
「そうね」

うしろのしょうめん、だーあれ