「好きよ」
私が迷いなく言った言葉は、静かに波紋を広げていった。
事の起こりは一ヶ月前。私が所属しているテニスサークルは他校との交流を月一回行う。その時も近くの共学との交流後だった。
「交流会の時の司会やってた人かっこよかったよね」
「ねー。あの人部長さんかな?」
交流会を終らせた帰りの電車内。ほとんどの生徒は会話に花咲かせる。
「そこ、うるさい!車内で迷惑でしょ」
「部長の方が声大きいですて。そだ部長」
「ん?」
逆に言われてしまい声かけられたらやはりそこは女の子。話は進む。
「あの司会の人て部長ですか?」
「はずれ。あれは副部よ。あの横にいたチビが部長よ。ついでに副部はお手付きだからアタックしても無駄」
「ちょっとさあや。そんないいかた」
私のすっぱりの物言いに横から幼馴染みでもある副部長がわってはいった。私はしょうがないというように説明をつける。
「彼らは私達の幼馴染み。以上」
そう幼馴染みである私達。ただ副部長達はくっついた。部長の私達は、未だに幼馴染み。もっともあいつがどう思っているのかは知らない。
「さあや。やっぱり私がヒロユキくんとったから怒ってる?」
部活も解散し副部長のゆうなと二人きりの時、突然話題を振られた。
「全然?」
思わず返しつつもやはり疑問が残る。ゆうなはそれにかすかに反応し続けた。
「じゃあかずやくんと一緒になれないのが問題なのね」
ゆうなはさすが幼馴染み。しっかり見抜かれていた。
「でもさあや。だめよ、昔みたいにかずくんと接してばっかりじゃ。もっとかわいくしてアピールしなくきゃ」
ゆうなはかわいく迫ってきた。言われながらやっぱりゆうなは女の子だなとか思ってしまう。
私は素直になれない。今更幼馴染み以上になれるかわからないしそれ以下にはなりたくない。それになんか恥ずかしい。だからどうしても踏み出せない。
そんなこんなであれから一ヶ月。私は半忘れかけたまま過ぎていた。
そして今日。部活がないのでまっすぐ帰ろうとした矢先、気がついた。
校門の前には幼馴染みの三人。
私はなんとなく何かあると感じ進んだ。
「久しぶり」
とりあえず声をかける。するとかずくんがひろくんにぽんと背中を押された。
それが合図だった。
かずくんがみるみる赤くなり小さなかろうじで聞き取れるくらいの声で言葉をつむいだ。
「オレはさあやのこと、好きです!さ、さあやは?」
予想はあった。だから私は平気なふりをして答えた。
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