「ユキにいさま」
「キヨカですか」
庭のすみ。このようなはずれまで来るものは少ない。そしてだからこそユキは気に入っていた。
人が来ないならば噂話など聞くこともない。
皆焦っていた。ユキだけが早くに生まれた。そのあとが続かなかった。ユキの親は早くにユキを生んでしまったのだと陰ながら言われていた。
そして待ちに待った子どもがキヨカである。キヨカは生まれてすぐ娘と判断したときからユキの婚約者と周りが決めた。正確には誰も何も言わなかった。しかしキヨカは生まれて間もなくからユキと一緒にいることが多い。
「キヨカでよかった」「?」
まだ幼いキヨカにはわからない。
親のことを聞かずに済み、落ち着けるところを探し。人と接することは本当は苦手で、それが余計に苦手となっていこうとしていた。
そんなときにキヨカが生まれた。
そして。
まだ赤子なのに小さい本当に小さな瞳で見つめ、小さな手で一生懸命掴もうとした。
あの瞬間からキヨカを愛しいと思った。
「キヨカ、大好きだよ」
「私も」
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