音が聴こえた。
それは久しぶりに本当に久しく聴いていなかった音。
私はずっとずっと独り。今もそしてこれからも。
何もない空間を独りさ迷い何者とも関わらず何物にも触れられず。時が流れ、私自身の存在が朽ちるその日まで何もないと思っていた。
音は本当に小さく消えてしまいそうだったが私は未だかつてない程に集中し聴きいる。
誰かの名を呼んでいる声だった。
私は必死になって聴いた。しかしさしてはっきりとは聴こえなかった声が私を呼ぶのではないとわかってしまうとそのまま聴くのをやめた。自分でもその行動には少し驚いたが、あの声も小さく聴こえなくなるとまたなんとなしに独りでいるのが当たり前になった。
私は独り。私はここにいる。それだけ。
私は何をしているのだろうか。
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