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「あーあ。お客さん来ないかなー」
ヒロはソファーに寝そべりながら呟いた。もう何度目の台詞だろうか。
ここのところずっとお客は来なかった。
「あら、いいことよ。お客がいるということは時間に追われる人がいるということ。そういった人が少ないからお客さんも少ないということだもの」
アオイが何度目かのヒロの呟きに答えた。
ここはショップ。けれど普通のショップではない。曜日を売っている。一風変わったショップである。
チリンチリーン
空白の間に突如鈴の音が響いた。それはドアのベルだった。そしてショップのドアが開く。
「あっお客さん」
ヒロは勢いよくソファーから跳ね上がりドアの方へと走った。
「何?この店?今までこんなのなかったよね?どうして急に現れたわけ?何売っているの?てかなに、このガキ」
ドアから現れたのはヒロと対して変わらないランドセルをしょった少年。そしてその少年に隠れるようにくっついている少女だった。
「こんにちは」
アオイはにっこりと奥から少年たちに挨拶をする。するとそれに気がついた少女が少年の後ろから軽く会釈をした。
「あなたたちくらいのお客様は初めてね。紅茶いかがかしら?」
「お金とるの?」
アオイの誘いに少年が間髪要れずに質問してきた。
「いいえ。まずはあなたたちの望みを聞きましょう。あなたたち、時間に追われているのではなくて?」
「何それ?お姉さん占い師?まあ当たってなくもないんじゃない?今時の子供で塾とか習い事していないなんて私立に通っていたらありえないんじゃん?」
少年は憎たらしくどんどんとしゃべりだした。どうも根本はおしゃべりらしい。アオイ、そして少女は静かにそれを聞いていた。ヒロだけがおもしろくないという顔をしてソファに戻っていた。
「ならあなたたち遊ぶ時間がほしいのかしら?1日誰にも束縛されない時間を与えることが私には出来るわ。どうする?」
「いくら?ただってわけないよね。てかただってほうが怖いと思うけど。大体、そんなこと人間が出来るわけないとは思うけど?子供だましは大概にしてほしいね」
「あら、あなたたちの大切な物。それをいただけるのなら出来るわよ。私は人間ではないもの。さあどうする?」
アオイは少年の問いに平然と答えた。その回答に少年は一瞬思案する。それから少しだけ慎重に質問した。
「それってさ、後払い?ちゃんと1日遊んでからでいいなら考える」
「それは別に構わないわ。どちらでも私は嘘はつかないもの」
「じゃあのった」
結局、一瞬の思案で少年は少年らしく答え、契約は成立した。
二人はその後、もう一度来るから、と言い残し帰っていった。
嵐の後のように静かになった室内で、お茶をしながらアオイはヒロにさりげなく聞いた。
「ねぇヒロ。あの子たちからは何を戴こうかしら」
「さあね。子供だからって遠慮しなくていいんじゃない?あいつら頭の回転は良さそうだったし」
「そうね」