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主(しゅ)=「羅生門」という箱庭(世界)を作った人物
女性=主のそばにいる人
コンコン。
ノックと共にその女性は部屋へ足を踏み入れた。
「主よ。あなたはまたそのような箱庭を」
「今、終わらせるさ」
部屋の中の人物、主は部屋の中心におかれたテーブル上の箱庭を見ながら答えた。女性はそのままテーブルの箱庭近くに紅茶セットを置く。
「羅生門、ですか」
ちら、と目をやった女性が口ずさむ。それに主は相変わらず箱庭に目をやったまま口にした。
「昔の文献を再現してみたんだ。今、下人という者が老婆という者から服を剥ぎ取ったところさ。後はボクが語ればいい。『下人の行方は誰も知らない』とね」
女性はその箱庭を見ながら聞いていたが、最後の部分で主を見つめながら口を開いた。
「どうしてそう語られるのです?あなたはこの箱庭を作りなされた。それならばこの下人という者の行方もご存知のはずでございましょう?」
女性の真面目な問いに初めて、主は箱庭から顔を上げて答えた。
「ふっ。この後、この下人という者は強盗を行うようになる。そんな汚いものは語るに足りない。だからボクがあえて語らずに済むようにこう語るのさ。『下人の行方は誰も知らない』と。さあこれでこの箱庭もおしまいだ」
主は女性の目の前で、最後の言葉を唱え、この「羅生門」という箱庭を終了させた。そして、女性の持ってきた紅茶を一口飲みながら、窓辺に腰掛け、次には外を眺めていた。
授業アンケートに、【「羅生門」の<語り手>をどのように捉えますか?】という質問が出たとき八神は迷わず、「世界の神」と答えました。さすがに一言ではまずいと思ったので、その後に「この作品の中の見えざる何か、神のようなものが誰に語ることなく独りごちているのを私たちが聞く形」と答えてました。で、(前置き長いけど)その書いた紙が帰ってきて読み直して思いついたお話なのです。
中身は相当、というかほとんど「花帰葬」に影響されているなと書いたあと思いましたw
ついでに末尾は「羅生門」の『鼻』版を使っているので、最後の一言が上記になりましたv