高校二年の夏。
静かにけれど激しく燃え続けていた私の心はその長さから閉じ籠っていた何かを爆発という形で表現してしまった。
家族との衝突はしごく簡単であっけなかった。
今まで我慢していたのがいいこでいた自分がバカに思えるくらい、簡単な壊れ方。
無言で荷物まとめて無言で家を出た。
私が家を出ることには呆然としていた家族も何か言ってきたが父親だけは何も言わず見ようともしなかった。
とりあえず夏なのを良いことにふらついた。
夜、一人で外出などしたことがない私にとってそれは未知の世界に思えていた夜の散歩。こんなに気持ち良いとは知らなかった。
お年玉は全額郵便貯金。おこづかいの半額は銀行貯金。特に必要としなかった上にとりあえず貯金は怠らなかった。
だいたい百万ちょっとというとこだろうか。
とりあえず家の周辺も落ち着かないから家から持ってきた自転車を適当に走らせた。
なんとなくせっかく出たこの行為もどこかで終わらせてしまう気がして。今のうちにやりたいことはやろうと思った。
走りながら思うのは学校。
もうすぐ夏休みだ。ただ来年は受験勉強だなとか大学で何しようとか。
自転車乗りながらふらっかふらっか。考えるのは現実のことで笑えてしまった。
一週間くらいそうやって何も考えずになんとなくで行動してみると何も考えないことも大変になってきた。
今まで時間で動いて生きてきたせいかもしれない。
でもそんな頃、あいつにあった。
「お姉さんさ、そんな自転車でどこ行くの?」
ボーッとこいでいた自転車の後ろから声がした。
私なんかの通学自転車とは比べられないかっこいいマウンテンバイク。
「げっあんずって一つ下?!オレ、普通に大学生かと思った」
彼はヨウといった。なんとかというとこに行くらしい。見た目は幼いくせに一つ年上の高三だった。
「ヨウ、受験は?」
「あっオレ、専門学校行くんだ。絵、書いてるんだ。見る?」
たまたま声かけられて一つ違いで。ヨウは気さくで休憩先では彼の持っていたキャンパスをみせてくれた。
「オレさ、絵書くの好きなんだ。でも体動かすのも好きでさ。だから鉛筆と紙でも自転車旅行にしたんだ」
ヨウは嬉しそうに言った。
私はヨウの絵にひかれてしまった。それからなんとなく一緒に走った。けれどヨウはマウンテンバイクで私は普通の自転車で。
携帯だと文字制限があるためやむなく続く。
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