二年の時、初めて知った。
といっても結構有名だったらしい。
「綺麗な子だな~」
教室に入って落ち着いたら目に入った。黒く流れるような髪。長く綺麗に整った睫。形良い身体。
「ありゃ、氷響は時任に一目惚れか?」
氷響の独り言に後ろからきた彼女の親友が口を挟む。
「そんなんじゃないよ。ただぱっとみてそう思ったの。あれ?ミカは彼女、時任?さんのこと知ってんの?」
ミカは氷響の問いに思わずキョトンとした。が二人でドアの前を占領し後から来た生徒の文句の声でとりあえず氷響と廊下のはじに移動した。
「氷響、あんたってほんと陸上だけなのね」
ミカはとりあえずため息をついた。氷響はスポーツ推薦で入学し部活の陸上では程々の成績はおさめている。しかし一言でいえば陸上バカな気があり今も校内の話に疎かった。
「彼女は時任限。入学以来学校に顔を出しているほうが少ないんじゃないかて話。美人で無口。無表情。幸先生、冴晞先生、獅戯先生のところに出没歴はあるものの基本一人。あっ違うな、確かうちの学年の男子と三年の綺蝶先輩との目撃情報あり」
ミカは嬉しそうに氷響に語っていたがふとみた時間に一息おいた。
「そろそろ入っていたほうがいいかも。氷響、まだ聞きたいことある?あんた、そういうの相変わらず疎いんだから。なんかあったら聞きなよ」
「はーい。ありがとうミカ」
氷響はミカの話を聞きながらどこかわくわくした。
時任限。今まで氷響の周りにはいなかった無口な無表情の美人。
氷響はまだ話したこともない彼女を気に入り、次の空き時間には声をかけようと密かに胸に誓ってみた。
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