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雨は嫌いだ。
湿気は多くなるし、ズボンのすそは汚れるだけでなく、ぬれるから。
けれどそんな雨の日に彼女に出会ったのもまた事実。
それはある雨の日。
ふと信号が青のほうの横断歩道を見ていて目が留まった。横断歩道のど真ん中で傘をさした彼女はゆっくりとその場にしゃがみこんだのだ。その動作を信号待ちしているボクはそのまま目線を動かさなかった。彼女は道路を見て、そしてナニカを道路から持ち上げ、手にのせた。その間に横断歩道の信号は青から赤に変わってしまった。そして車は当然のように動き出す。
危ないっ!!
そう思ってもボクの足は動かず声も出さず、ただ目もそらさずに彼女を見ていた。
すると彼女に向かっていた車はすっと彼女を通り過ぎて行く。皆同じだった。彼女はそのままボクのいる横断歩道のほうへ歩いてくる。その間も車は一台も彼女にあたらず、誰も気にせず通りすぎる。
ボクは自分の渡るべき信号は当に青になっているということを認識したものの、彼女を見たまま足はすすまなかった。
ボクの隣を彼女が通り過ぎる。
「あなたはだれですか?」
思わず通り過ぎた彼女を呼び止めたくなって、彼女の声を聞いてみたくて、そして思わず聞いてしまった。
「私は・・・」
彼女の声はとても綺麗な透き通る声だった。