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またあの季節が巡ってくた。
彼女と会えるあの季節が。
「おい、きいてんのかよ?」
匂いがした。あの懐かしい、冬にしかしない匂いが。オレは友達の話を聞き流した。もう世界は無音になっていた。しばらくして雪が降ってきた。ゆっくりと。静かに。
「ゆ…」
言いかけたオレの口は空から舞い降りた天使の指で止められた。
オレはそのまま重力のない天使を両腕で抱きしめた。
きっと横にいる友達は、オレを見た全ての人は、オレをおかしいと思うだろう。
彼女は他の人には見えないのだから。
オレは一人笑顔で、両腕を抱き寄せるようにしているように見えるのだろう。
けれどそんなみてくれなどどうでもいいと、思った。
天使の顔を確かめるように見つめて、止められた指を優しく離して、その名を呼んだ。
「ゆき」
オレがつけた彼女の名前。雪が降ると同時に現れ、雪が溶けてしまうといなくなってしまう。だから雪と同じ名をつけた。
名を呼ばれたゆきはにっこりと幼い少女のように優しく、そしてうれしそうに笑う。
またいつもの通り春には消えてしまうのだろう。それでも会えるだけでうれしいと思う。
冬。オレはいつもその時を大切に愛しく思う。
雪。それはゆきの使者。
「ゆき、大好きだよ」
そいう言うとまた、にっこりと優しく、うれしそうに笑ってくれた。